福山の気象

 目次
 1.気温の長期変化
 2.日々の平均気温
 3.福山アメダスと農業研究センターの気温比較
 4.猛暑日・熱帯夜日数、マイナス5℃以下の日数
 5.2016年6月の大雨
 6.平成30(2018)年7月豪雨
 7.令和3(2021)年8月の記録的な大雨

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作成:2020.04.30、最終更新:2024.07.07

0.福山特別地域気象観測所(旧福山測候所)の沿革

 昭和 9年 7月 7日 広島測候所松永臨時出張所設置。
 昭和17年 1月 1日 常時観測開始。創立年月日とする。
 昭和22年 4月30日 広島管区気象台松永観測所に改称。
 昭和25年 6月 1日 松永測候所に改称。
 昭和45年 4月17日 福山測候所に改称。
 平成14年 3月 1日 福山測候所廃止。福山特別地域気象観測所へ移行。
 (広島地方気象台HPから抜粋)

  (2016年11月3日撮影)



1.気温の長期変化

福山アメダスで観測された平均気温(年単位)の長期変化を下図に示す。
長期的に気温は上昇傾向で、1990年代に3回の大きな山谷を経て、顕著な気温ジャンプがあったことが分かる。この傾向は、日本全体の平均気温についても同様である。
一方、2000年以降は年による変動はあるものの、気温上昇の停滞現象(ハイエイタス)が依然続いているようにもみえる。
2019年から4年続けて、年平均気温が16.2℃だった。
2023年の年平均気温は16.5℃で、観測史上2位の記録だった。




月平均気温(平年値との偏差)の長期変化を示したのが下図である。
月単位でみると、平年値との偏差がプラスマイナスに大きく振れている月が意外に多く、年単位では見えなかった気温変化を知ることができる。

現在使用されている平年値は1991年から2020年の30年間の値である。グラフ下の枠内の数字は、平年値に対する10年単位の偏差である。




2.日々の平均気温

日々の平均気温を示す。ここでは、福山にUターンした2012年以降に限る。
曲線は平年値を示し、平年値を超えた場合はオレンジ色、平年値以下だった場合が青色である。グラフ下の枠内の数字は、月単位の平均気温の平年差である。

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2024年。
2月の月平均気温は7.0℃(高いほうから5位)で、近年では2021年の7.2℃に次いで高かった。
4月の月平均気温は16.3℃(高い方から2位)。7月の月平均気温は28.3℃(高い方から4位)。
8月は高い方から2位。9月は記録的な猛暑で、最も暑かった昨年9月の気温を大幅に更新した。




2023年の年平均気温は16.5℃で、観測史上2位(2023年時点)だった。
1月は気温の変動が大きく、3月はいままでで最も暖かかった(観測史上1位タイ)。
7月上旬は平年以下の気温の日が多かったが、中旬以降は一転猛暑となった。27日の最高気温38.2℃は、7月として1位タイ、通年でも3位タイの記録だった。9月は月平均気温の記録を更新し、最も暑い9月だった。
10月は今年初めて月平均気温がわずかではあるが平年を下回った。
11月は上旬に異常な高温、中旬からは早い寒波到来と、気温変化の大きい月だった。12月も高温期と厳寒期があり、気温変化が激しかった。




2022年の年平均気温は16.2℃(史上4位(2022年時点))で、2019年から4年連続で同値となった。
1月〜2月、12月は低温で、逆に3月〜4月、6月後半〜7月前半、9月、11月は高温だった。
梅雨明けは最早かと思われたが(中国地方 暫定6/28)、7月上旬〜中旬に天候不順の日が多かったため、9月になって大幅に見直しが行われた(中国地方 確定7/26)。→ブログ
猛暑日日数(14日)のわりに最低気温25℃以上だった日数(28日)が多かったが、意味するところはいまのところ不明である。→4項参照




2021年の年平均気温は2019年、2020年と同じ16.2℃(史上4位(2021年時点))だった。
1月9日には最低気温マイナス7.5℃を記録。1月下旬から4月初めにかけては顕著な高温が続いた。
梅雨入りは5月12日ころで、梅雨の期間は2ヵ月続いた。8月中旬には前線による記録的な大雨があった。
10月前半は高温傾向だったが、10月後半以降は寒暖の変化が大きかった。




2020年は3月までは平年よりかなり暖かかったが、4月は一転して低くなった。
7月は低温傾向だったが、立秋を過ぎた頃から残暑が厳しくなった。11月後半の高温は顕著。
年平均気温は昨年と同じ16.2℃(史上4位(2020年時点))だった。




2019年の年平均気温は16.2℃(史上4位(2019年時点))だった。




2018年1月から2月にかけては低温が続き、最低気温5℃以下の日が7日もあった。→4項参照
7月上旬には、西日本を中心に広い範囲で豪雨を記録(平成30年7月豪雨)。
年平均気温は15.9℃(史上9位(2018年時点))だった。




2017年の年平均気温は15.4℃だった。




2016年1月25日、福山アメダスで最低気温マイナス8.1℃(史上3位タイ)を記録。沖縄で雪が降ったことでも話題になったが、寒波はこの1回だけで、1月平均ではプラスの気温となった。
6月22日〜23日、福山で大雨被害発生し、全国ニュースとなった。
気温は年間を通して高く、年平均気温は16.4℃(史上2位(2016年時点))だった。




2015年の年平均気温は15.7℃だった。




2014年8月20日、広島市で大規模土砂災害発生。年平均気温は15.3℃だった。




2013年の梅雨明けはかなり早く(中国地方7月8日頃)、暑い夏だった。年平均気温は15.7℃だった。




2012年9月初めに福山にUターンしたが、残暑が厳しかった記憶がある。一方で12月8日には福山中心部で初雪を観察し、冬の訪れは早かった。年平均気温は15.5℃だった。




2011年。




2010年。平年値は1981年〜2010年の値を便宜上使用している。




3.福山アメダスと西日本農業研究センターの気温比較

福山特別地域気象観測所(福山アメダス)は、JR福山駅の西南西 約11.5kmの松永町にあり、福山中心部とは沼隈半島で隔てられている。そのため、福山アメダスと福山中心部との気温差が(あるのかないのか)気になっていた。

農研機構西日本農業研究センターの気象観測露場は、JR福山駅の東北東 約2.8kmという福山中心部により近い場所にあり、気象データが公開されているので、2019年の気温の比較を行ってみた。

福山アメダスと農業研究センター(農研C)の位置関係を下図に赤丸で示す。




西日本農業研究センターの気象観測露場 (Webページより引用)
(北緯34°29′54″、東経133°23′24″、標高2m)


2019年1年間の日平均気温は農研Cの方が僅かに高いものの、その差は0.282℃と非常に小さく、両者の気温はほぼy=xの直線上にあることが分かった。




同様に、日最高気温の差は0.161℃、




日最低気温の差は0.226℃であり、いずれの差も非常に小さかった。




4.猛暑日・熱帯夜日数、マイナス5℃以下の日数

福山アメダスで観測された最高気温が35℃以上の日数と最低気温が25℃以上の日数を示す。
1990年頃を境に、共に日数が増加していることがわかる。

旧福山測候所で常時観測が始まった1942年に、最高気温35℃以上の日が非常に多かった(歴代1位タイ)ことは意外だったが、この年の夏は全国的に顕著な高温だったようだ。

「猛暑日」という用語は、2007年から使用されるようになった。
「熱帯夜」は、気象庁では「夕方から翌日の朝までの最低気温が25℃以上になる夜のこと」と定められており、ここで示した日数とは厳密には異なっている可能性がある。

<<< Wikipediaから引用 >>>
1942年(昭和17年)
7月下旬から8月中旬にかけては全国的に顕著な高温となり、福島市(39.1℃)、長野県松本市(38.5℃)、福井県福井市(38.6℃)、三重県伊賀市上野(38.8℃)、東京都八丈島(34.8℃)、高知県室戸岬(35.0℃)、同土佐清水市(35.5℃)、富士山(17.8℃)と、多くの地点でこの年に観測された最高気温が現在でも史上1位の記録となっている。名古屋では7月の平均最高気温が35.2℃、京都市では35.0℃に達した。また、京都市では35℃以上の日数が36日を数え、観測史上最も多い。また区内観測所の記録では愛知県豊田市で41.8℃、瀬戸市と奈良県御所市(41.0℃)など東海地方から中国・四国地方の内陸部を中心に17地点で40℃以上を観測した。しかし8月下旬は一転してかなりの低温になった。
<<< 引用おわり >>>




福山アメダスで観測された最低気温がマイナス5℃以下の日数の経年変化を下図に示す。
1990年頃から傾向が明らかに変わり、最低気温がマイナス5℃以下の日はめったに現れなくなった。
2018年1月から2月にかけては近年には珍しく気温の低い日が続き、このデータを調べるきっかけとなった。




5.2016年6月の大雨

梅雨前線が活発化した影響で、6月22日夜から23日未明にかけて中国地方は大雨となった。福山市では芦田川の支流など5河川があふれ、瀬戸町や山手町などの住宅街が広範囲に浸水した。




6月23日6時過ぎの芦田川の様子。右は山手橋の水位。

 


6.平成30年7月豪雨(西日本豪雨)

平成30年7月豪雨とは、2018年(平成30年)6月28日から7月8日にかけて、西日本を中心に北海道や中部地方を含む全国的に広い範囲で記録された、台風7号および梅雨前線等の影響による集中豪雨。同年7月9日に気象庁が命名した。別称西日本豪雨。(Wikipediaより)

「平成30年7月豪雨」の大雨の特徴とその要因について(速報) --- 気象庁

福山市では7月5日から雨が降り始め8日まで続いた。警報、注意報、避難情報等の経過は下記の通り。広島県に初めて大雨特別警報が発表された。




福山アメダスで観測された降水の状況は下図の通り。



芦田川は、下流部の山手や御幸でともに氾濫危険水位を超え、特に山手では計画高水位(5.83m)をも超えた状態が約2時間続いた。最高水位は5.97m(過去最高)を記録した。
(参考)津田2019, https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejhe/75/1/75_332/_pdf/-char/ja




芦田川神島橋付近(左)、瀬戸川(右)。7月7日11時頃。

 

芦田川山手橋付近(左)、高屋川との合流点付近(右)。7月7日14時30分頃。

 

福山市神村町の土砂災害現場。左の写真は山陽本線の線路に土砂が流れ出した現場。

 

降水量分布に河川の流域を重ねてみる。


7.令和3年8月の記録的な大雨

2021年8月11日から19日にかけて、日本付近に停滞している前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み、前線の活動が活発となった影響で、西日本から東日本の広い範囲で大雨となった。
8月12日〜20日の福山の降水量をグラフに示す。比較のため平成30年西日本豪雨時の雨の降り方を灰色で示してある。

日々の状況はブログを参照。



日本気象予報士会中国四国ブロック合同例会での発表資料(2021.09.18)
流域地図から見た8月の大雨と流域に関する話 (抜粋)
 


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